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光原百合『イオニアの風』を読む。

光原百合『イオニアの風』を堪能した。2段組み、367ページで、活字も文庫本並みに小さくて結構読みごたえがあったが、ワクワクしながら面白く読んだ。

ひと言でいえば、ある種の「ギリシア神話的神々の黄昏」(神々と人間との間に断絶が起きるという意味で)といえるようなテーマを持った、「ギリシア神話をベースに作者が勝手に展開させた物語」(作者あとがき)である。例えば、ギリシア神話本編では、事実としてのみあっさり語られる、トロイ戦争後のアガメムノンのエピソードやそのほかもろもろの出来事やエピソードに作者の想像力で肉づけがされ、説得力を持った作品になっている。もちろんこれは、近代的小説が人間の内面を描く技巧を習得したからこそ可能になったといえるだろうけれど。

そのため、アガメムノンとメネラオスの関係や、ヘレネの結末など、光原さんの作品はじんと心にのこるものになった。とはいえ、作品の中心であるテレマコスとナウシカアの冒険の旅は、神話的世界観の上に展開されたからこそ、その気品や高潔さにリアリティがあるともいえるのである。

神話が断片的な記述の集大成であるのは周知のこととしてあるので、合理的な因果関係や理由づけなどはあえてしないではいたものの、やはり、作家の想像力できちんと物語化されるとおもしろい作品に結実するものであると今さらながらに感心した。なかでも、ローズマリ・サトクリフの『オデュッセイア』、『トロイの黒船』(イリアッド)と比べても、ギリシア神話を「独自に展開させた」という点では大きく凌いでいるといえるかも知れない。再話をこの作品と同じレベルで議論することはルール違反であることは承知しているが、「ギリシア神話系」という大きなくくりの中で考えたとき、この作品には独自のおもしろさがある。日本語も美しい。

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