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芋づるで When Patty Went to College へ

北村薫の作品はインターテクスチャリティの宝庫だ。中でも、昭和初期の帝都(東京)に暮らす上流階級のお嬢様「花村英子」を主人公にした<ベッキーさんシリーズ>は、私の読書心をくすぐる。というわけで、ウエブスターの Just Patty When Patty Went to College を読んだ。<ベッキーさんシリーズ>第2巻の『玻璃の矢』に収録されている「相夫恋」にパティ大学編の "Elusive Kate Ferris" などが使われ、作品のプロットとうまく絡まり合っていて、いたく興味をそそられたためだ。

このシリーズはミステリに分類されているらしいが、私はそうと意識して読んではいない。確かに、作品では、些細な日常の綻びや気づかれそうにもない謎に目を凝らすところから、不思議がほろほろと解きほぐされてゆく鮮やかさが秀逸であると思う。しかし、私にとってさらに魅力的なのは、「時代の空気感」のようなものである。「相夫恋」であれば、岩波文庫で出版されたばかりの『あしながおぢさん』が、冒頭部分で作品をすすめてゆく大きなきっかけとなっている。あー、『あしながおじさん』は『あしながおぢさん』として岩波文庫で出たのか、などと、この作品には思い出があるだけに、深く感じ入ってしまうのである。

英子は子どもの頃に英国人の家庭教師に英語を習っていたそうだから、英語の読書でも不自由しないだろうが(「桃太郎」より「ピーターラビット」らしいから)、それにしても、学友の綾乃さんもWhen Patty Went to College を読んでしまうというあたり(読まなきゃ話が始まらないのは承知しているが)、当時の女学生(現在では中3か高1あたり)の英語力はすごかったんだと思う(もちろんすべてではないし、もてる階級の特権であったともいえるけれど)。あの英語はなかなかのものだと思う。

また、北村薫の文章は簡単に読み流せないところにも魅力がある。暇つぶしにぼんやりと読んでなどいられない。そんなことをしていれば「???」となってしまう。納得するまでに、何度も立ち戻り、頭をひねったり、「ええっ?」と思い読み返したことも多い。「漫然と読んでいるから混乱するのだぞ」という天の声が聞こえてくるようだった。さらに、比喩も豊かに使われている。たとえば、「校内の挨拶は≪ごきげんよう≫と≪おそれいります≫の二つでほとんどまかなえる。効能の多い葛根湯のような言葉だ。」(『玻璃の矢』p92)「葛根湯」や「クレオソート」など昭和の臭いがする言葉だ。

残念なことに<ベッキーさんシリーズ>は『鷺と雪』(直木賞受賞)で完結してしまった(最後のエピソードは深く心に突きささるものだった)。しかし、また、どこかでベッキーさんと英子さんに出会いたいと思う。ところで、ベッキーさんのニックネームの由来は『虚栄の市』から取られているが、かといって、サッカレーは今さらねぇと読むには至らなかった。

そういえば、『あしながおじさん』の原書である Daddy Long Legs は私が初めて買った(京都の丸善で!)原書である。先頃、訳し直された『あしながおじさん』では、本文の呼びかけに「おじさん」とあったのが興ざめだった。やはり手紙の書き出しは「おじさま」でなくてはと思うのは、私だけか。

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タイトル

こちらのご本、昭和と○○院の雰囲気がふんだんに
ちりばめられていて、お嬢様気分をたっぷり味わいました。

読んだ後、言葉遣いも宮様風になり・・
「ママ、影響されてるよ」と言われました。
お出かけに振袖を着たり、ベッキーさんに送られて通学したり、
そんな暮らししてみたかった~

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