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「エパミナンダス」には

「エパミナンダス」は、「おいしいおかゆ」と並んでストーリーテリング初心者が、まず最初に取り組む作品の定番中の定番といえるかもしれない。何しろ東京子ども図書館発行の「おはなしのろうそく」シリーズの第一巻の一番目に収録されている作品でもある。本のタイトルも『エパミナンダス』だ。

このお話を一番最初に聞いたのはもうずっと昔のことである。ことによったらまだ学生の頃だったかもしれない。小澤先生の主宰する「昔話大学」のお話の講師として活動している(いた? 本業で偉くなってしまったらしいし…)M・N女史が、H市で「ストーリーテリングの会」を立ちあげたときにお手本として語って下さったのだと思う。あるいは、別の機会であったか、いずれにせよ、M女史からはじめて聞いたお話である。しかし、M女史には申し訳ないが、その時私は、これをおもしろいと感じる事もなく、自分の心の持っていきどころがなかったように記憶している。あの時はこのお話を「おもしろいお話」「よいお話」と思わなければ、自分にはこの場にいる資格がないのだろうかとすら感じてしまった。以来、この「エパミナンダス」にはずっと違和感を持っていたし、私にとっての鬼門の作品であった。

ところが、今年度は「異文化表象」をテーマにした授業で、このお話を語る機会を2回持った。自らが作品を語ることで、違和感はますますつのり大きくなった。授業での眼目は、絵本化された「エパミナンダス」に伺える、明らかな黒人蔑視の視線を確認することで、そこから出発して「異文化表象」につなげることにあった。

「語る行為」のなかで、私は、自分の立ち位置がきまらず、つねに不安に駆られながらどっちつかずのまま語り終えた。結末も楽しいものではなかった。つまり、母に言われたことを無批判になぞるだけのエパミナンダスにも同化できず、かといって、そんな子を「あたまががないねぇ」と言う母親にも心をよせることができなかったからだ。テクストは簡潔で昔話の描写のようにすっきりしているて構造も単純なため、かえって語り手がエパミナンダスからもおかあさんからも距離をとって語ることが難しいのかもしれない。結局、後味の悪さだけが印象に残る作品となった。しかし、この作品が語り初心者の定番となっているのは、簡潔なテキストと解りやすい構造のためであろう。

子どもたちはどう感じるだろう? バカ正直に母に言われたとおりの行動を取るエパミナンダスの失敗を予測して、「エパミナンダスはバカだなぁ。」と半ば同情的に彼の失敗を受けとめるのだろうか? 同じような作品に『くんちゃんのはたけしごと』という絵本があるが、この作品にも私は抵抗感をもっている。イノセント(無垢で無知)な子どもをいたぶっているとしか思えないのである。

「エパミナンダス」とは珍しい名前だと思っていたら、どうやら、実在した人物らしいということが解った。古代ギリシアに生きた軍人で新しい戦術をもってスパルタ軍を破った功績を持つらしい。こちらはEpameinondas と綴り、スペリングに若干の違いがあるが、作者のサラ・コーンにこの軍人のことが頭にあったとしたら、わざわざ高名で珍しい名前を持ってきて茶化す意図があったのだとも推測できる。

しかし、絵本といい物語の内容といいこの作品はもっと議論されてしかるべきだと思うが。 

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