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柏葉幸子『つづきの図書館』を読む

「離婚歴あり無職」の女性が、伯母の介護をきっかけに自分の故郷に戻ることに決め、小さな図書館に臨時採用がきまったところから物語は始まる。子どもの文学の主人公は★★であるべきだと固定観念を持っていなかったとしても、この作品の主人公(山神桃)はかなり異色である。

偏屈な館長のためか、山神桃さんのまえにすでに3人の司書がやめたらしい四方山市立図書館下山別館は、遠くから見ると、「ツタのからんだサイコロ」みたいなこぢんまりした図書館である。どんなに小さくても図書館は、博物館と同様、時間と空間が凝縮された場所だ。ファンタジーの場としてこれほどふさわしい場所はないだろう。というわけで、この新任の臨時採用司書、山神桃さんにも突然不思議な出来事がおそいかかる。

本を読む側としては、その物語の内容が気にかかるのは当然のことである。「次にいったい何がおこるのか」「結末はどうなるのか」という思いにかられて、私たちは物語に熱中する。ところが、この作品は、本の中の登場人物が読んでくれた人の「つづき」が気になって、こちらの世界に現れでてしまうのである。

本の整理に図書館の二階に上がっていった桃さんは、突然声をかけられる。「つづきがしりたくてたまらん」と。なんと声の主は絵本の中から出てきた「はだかの王様」で、「青田早苗ちゃん」の消息を知りたいという。そして、桃さんは、青田早苗ちゃん探しにのりだす。早苗ちゃんの捜索が終わり、やれやれと一息つく間もなく、つぎつぎと、絵本の中の登場人物が捜索依頼をしてくる。

人捜しの中で、なぜ、その人物を探さなくてはならないのかという必然性が徐々に明らかになり、最終的には、桃さん自身の抱えていた問題も明らかになるという運びは、常套的であるともいえるかもしれないが、ひねりも効いていて、よくできている。また、絵本から出てきた登場者が気にかける子どもたちの抱えている問題が「いま」を映しだしている点では、たのしく読める作品ではありつつ、人間関係の複雑さや関係の不可避性に思い至らせ、考えさせる。だからこそ、おもしろいのかもしれない。

「はだかの王様」をはじめとする個性的な人物造型や登場者と桃さんとのやりとりなどゆきとどいた描写の細部が楽しい。

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