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赤木かん子 『子どもに本を買ってあげる前に読む本』を読む

つねづね、赤木かん子の発言や行動には理解できない部分が多く、疑問を抱いてきたが、この本を読んでどうやらおぼろげながら、彼女の立ち位置というものがつかめてきたようだ。彼女は、たぶん自分自身のものも含めて「おとなの評価」というものを極力退けているのだと思う。

「自分[おとな]が読みたい本」や「自分[おとな]が読ませたい本」を読むのではなく、子どもが「喜ぶ本」を読むべきであるということ。そして、そのためのガイドブックをえんえんと彼女は書いている。「良識あるおとなが子どもに読んで欲しい本」というものへの大いなる不信を、私はかん子の著作から感じるのである。

かん子のおすすめ本は、どうやら、現代の子どもたちに「うける本」ということになりそうだ。確かに、子どもたちが変わってきており、それぞれが、よって立つ「文化プレート」にはギャップがあるから、古い本は読まれないだろうという意見には、同意できる部分はある。しかし、そんなに乱暴に言いきってしまっていいのだろうかという疑問も出てくる。また、そこからだけの発言では、大事なことを見過ごしてしまうのではないかとも思う。

彼女のスタンスでは、おとなが読んで欲しい本は、「古典」の殿堂入りとなってしまうのである(もちろん「読むな」と発言しているわけではないが)。例えば、エッツの『もりのなか』を、「でも今あれを見たがる五歳児がいたとしたら……この子は将来画家になるかも、くらいに思っていいと思うよ」と断罪する。断罪するという言葉が不適切だとしたら、「切って捨てている」。このすぐれた絵本のすぐれた部分にひと言も触れることなしに、このようにおっしゃる事は、やはり「切って捨てる」行為に思われ、私には理解できないことであった。

毎度、アマゾンのカストマー・レビューでは芸がないのであるが(むしろ、このような大衆的なサイトのレビューの方が全方位的な意見を網羅できるという利点もある)、ここではほとんどの人が、『もりのなか』を高く評価している。実際に子どもとわかちあった体験談でも、一例をのぞいては、「地味な絵本だと思ったが子どもが気に入った」というレビューばかりだ。それは当然だろう。この絵本は、幼い子どもの根源的な願望を満たしている。絵本が「絵本」を超えて、さらに深い物語を子どもたちにさしだしている作品だからだ。

赤木かん子は、意識して「作品の評価」を避けているのだろうか。子どもの本を集めてきて、その中から新しさを見いだしたり、直観的に子どもに好まれる本を見つけ出したりする才には長けている。網羅的な知識については、私など足下にも及ばないだろう。しかし、彼女の著作において作品の「読み」が追究されることはほとんどない。また、あれほど学校図書館や調べ学習について発言し、活動しているにもかかわらず、彼女から「読書論」(なぜ読書か?)を聞いたことはない(読んだことはない)。なぜ、「調べ学習」が必要なのかを問うことなしに、「調べ学習」のノウ・ハウを伝えることができるのだろうか。

1980年代後半になって、①紙おむつの登場、②おんぶの衰退、③ファミコンの登場によって基本的な子どもの育ちが大きく変化し、五感(とくに触感)の体験の欠落現象が起こり、子どもの成長に大きな問題がおきているという(山田真理子「子どもたちは警鐘を鳴らしている」)。そのような危機感の中で、「良識あるおとなたち」は、子どもを含めた私たちがいかに成熟できるか、その方法を模索している。絵本の「読み聞かせ」や「読書」に注目が集まるのは、絵本や物語が私たちの「成熟」に何らかの力を与えてくれるのではないかという期待があるからだ。

残念ながら、かん子の認識にはそのような問題意識が見られない。1998年を「ビッグバン」と名づける、経験から導きだされその直観については、「すごい」と言わざるを得ないが(1980年代後半に生まれた子どもたちが「読書年齢」に達するのが1998年だ!)、しかし、ビッグバンの結果としてあらわれた子どもや子どもの本の状況から導かれる行動や発言では、本質的な問題に迫ることができないのではないか。

数々の発言や「本の探偵」になった経緯から、かん子がずっと子どもの本(文学)に生きる力をもらってきたことが推察できる。しかし、彼女は「『エルマーのぼうけん』を暗記できるまで読み(中略)アーサー・ランサムの『スカラブ号の夏休み』のアップリケをしたベストを着て歩」いたにも関わらず、「自分が二十歳になった時に、小学生にランサムを読んで欲しいなんて、思いもしませんでした」という。

自分を育ててもらった「子どもの文学」(古典)の力を信じ、自分の子ども時代を丁寧にたどって、子どもと本に関わって欲しいものだ、と心から願う。

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考えたこと

布おむつ、おんぶで育て、
ファミコン(バーチャルなおもちゃ)からなるべく遠ざけ、
絵本を浴びるように毎日読んで育ててきた
3児の母でございます。

我が家には16年来テレビがありませんが、
それでもゲーム、インターネット、携帯電話。。。
バーチャルリアリティーという餌(おもちゃ)との
戦いの育児です。

勉強を決めた量だけすること、
家の仕事をきちんと教えて果たすのを見届けること、
首尾一貫していること、
これだけでも一日が暮れる頃にはぐったり。。。
この上押し寄せる洪水のように容赦なく入り込んでくる
「おもちゃとの戦い」があります。
上の子どもと私の対立する雰囲気に顔色を変え、
泣きじゃくる末っ子の感情も見過ごせず、
「償いに絵本2冊!
あなたがこの子にゆっくり読んであげること!!」
すでに声が枯れて、、、、出ない*0*



ご無沙汰してます!

 こんばんは。ご無沙汰しているうちに
とうとう年末になってしまいました。年内に授業に行きたかったのに、
気づいたら年内授業が終わっていました。
 来年こそは沢山うかがえることを祈って・・・。
来年もよろしくお願いいたします。

 かん子さん、どうしてそこまで、自分の子供時代と、
今の子供たちの間に線引きをするのでしょうかね?
確かに今の子供たちは流動刺激などの影響なのか、
低年齢化現象が進んでいて、読書もその影響が強く出ているので
しょうが、古典の力、私も信じたいです。

子どもを育てること

ブー子のママさま:コメントありがとうございます。テレビを見せずに絵本を読んで子どもを育てることは、口で言うほど簡単に実践できることではないと思います。頭が下がります。どうか、くじけずにおすすみください。でも、お母さんだって、「生きる力」が欲しい!

晶さま:お久しぶりです。かん子さんは、いま、学校図書館の現場で引っ張りだこのようです。しかし、彼女の言動をみていると、「学校図書館」の本質が理解できていないと、感じることしばしばです。これでいいのかと、気になるのです。 

ご無沙汰をしております。

たびたび芸のないタイトルで申し訳ありません。
かん子さんネタだったので、ちょっと一言、
つねづね思っているのですが、
かん子さんは、現場を持っていないのではないでしょうか?
今の子ども達を継続的に見ていく場所がないと、
往々にしてあのような発言になるような気がしてしようがありません。

共感しました!

はじめまして!

赤木かん子さんのことで、いろいろ調べていて、同じ気持ちの方がいらしてほっとしました。

実は先日かん子さんと一緒に飲む機会もあり、彼女なりの思いも直接聞けたのですが、しかし自分の考えは押し付けるけれど、人の話は聞かない人・・・

これって「おとなの好みを押し付けるな」っていうかん子さんご自身の主張に反してない?って思いました。

すごく本は読んでいらして、そこはすごいと思いますが・・・
なので、このブログに出会って、ほっとした次第です。

Re: 共感しました!

コメントありがとうおございました。また、リスポンスが遅くなってすみません。最近はあまりコメントもつかないので、うっかりしておりました。

人にはそれぞれの意見や思いはあるのは承知しておりますが、こと、子どものことに関するかぎり、慎重に丁寧に考えてゆきたいと思っています。

どうぞこれからも忌憚のないご意見をおよせ下さい。ありがとうございました。

はじめまして。

赤木かん子さんに対しての評価は、人によって大きく変わるようです。
いわゆる「本読み」の方。文学に慣れ親しみ、本は良いものだとの認識を疑っておられない方の中に、かん子さんに対して反発を感じる方が多いように感じます。

子供たちにとって「読書」とは「ボール遊び」と同じなのではないでしょうか。
遊ぶボールがソフトボールだろうとサッカーボールだろうと、楽しい時間を過ごすことが大事なのであって、どんなボールでも大きな違いはないのです。ましてや、優れた品質のボールかどうかはとても小さい問題なのです。

良識ある大人は、どんなボールでどんな遊び方をするのか口を挟みたがります。もちろん子供たちに良かれ、と思ってのことでしょう。

ですが、遊び始めたばかりの子供たちは、口を挟まれることに嫌気が差し、遊ぶのを止めてしまいます。そのまま遊び続けていれば、遊びの中にある奥深さを感じ取れたかもしれないのに。

私見ですが、かん子さんは「とにかくまずは楽しく遊ばせてあげようよ」と言っておられるのではないでしょうか。

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