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朗読教室

朗読教室の第1回発表があった。受講生がそれぞれ用意してきたものを朗読し、先生からコメントを頂いて終了した。新聞に掲載されたエッセイや一般読者向けの医学についての書物の一部を読んだ方もいたが、ほとんどの人は、文学の素材をえらんだ。素材の選び方によっても、その人と「朗読」とのスタンスがうかがえ興味深いものがあった。また、なぜその作品を選んだのかについての作文も宿題にでていたのである。今日のエントリは私の宿題を紹介することにしよう。私が選んだ作品は、「ぜつぼうの濁点」(原田宗典著『ゆめうつつ草紙』幻冬舎文庫所収)。

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       「ぜつぼうの濁点」について:「きぼう」の濁点になるために

この作品に最初に触れたのは絵本だった。一読して、まず、お話の面白さにひかれた。子どもの文学を仕事にしている私は、いつもいつも何かを読んでいるし、読まずにはいられない。そして、おもしろい何かを探して暮らしている。物語世界への探検は、私の仕事であり、趣味であり、生活なのである。

この絵本と出会ったときもすぐに学生に紹介した。「英米児童文学」というマイナーな科目を受講している文学部の学生たちには、授業のはじまりに「最近読んだ私のお薦め」として紹介した。教師をめざす学生には、子どもの読書資料をどう選択し、評価するかという講義の時に紹介した。学生たちの反応はかなりよかった。

しかし、何回か「読み聞かせ」をしたり、作品について考えているうちに、実は、この「ぜつぼうの濁点」には「あやうさ」ともよぶべきものもあるのだということに気づいた。絵本のもとになった『ゆめうつつ草紙』(幻冬舎文庫)に収録されているほかの作品に触れたり、作者の「あとがき」を読んだりしたことでさらにその「気づき」は確信に変わっていった。

物語づくりが「うますぎる」のである。作品は、それぞれ細部にまで計算がゆきとどき、きれいに収まっている。内容や構造にも破綻はなく、言葉の選択やリズムも完璧で隙がない。いわば、物語として純度100%なのである。

例えば、「真実」を口にするとたちまち命をなくしてしまう「嘘の国」の女王が真実の国の王子に恋をしてしまったお話。お互いがお互いを愛するあまり、嘘の国の女王は「真実」を口にし、真実の国の王子は「嘘」を口にして、二人とも命を失ってしまう。そして、作者は最後をこう締めくくる。

嘘と真実(まこと)、真実(まこと)と嘘。/きらきら、きらきら。/星があんなに輝いて見えるのは、その中で/違う二つのものがおなじひとつのものに/なろうとしているからなのでしょう。

不条理な運命のもとでの激しい二人の恋が、さしたる葛藤も修羅場もなく、最後には、空の上できれいに昇華してしまうのである。「違う二つのものがおなじひとつのものになろうとしている」という作者のメッセージがこめられた物語的結末も、おとなの姑息な知恵にみえる。それこそがこの寓話的物語のおもしろさではないか、という反論も承知しているが、おしゃれで気の利いたライトな物語は心に深く届くことはない。「ぜつぼうの濁点」にしても同様である。

「ぜつぼう」に長く仕えた濁点が、大きな「おせわ」の押しつけがましいお節介のおかげで自分の生きる道を見いだすだけでなく、多くの人に希望をもたらすという、一歩間違えば、それこそ押しつけがましい大きな「おせわ」な物語は、読みようによっては欺瞞的な印象を残しかねない。しかし、このままうち捨てておくのは、物語がおもしろいだけにもったいないし、忍びない。また、この物語にはその欺瞞性を超える力も持っているのではないかと直感したのも事実である。「欺瞞」を感じさせない「ぜつぼうの濁点」を伝えたいと心から思った。

言葉の技巧やお話のおもしろさに振りまわされることなく、自分自身の「思い」をこの不器用な「濁点」に重ね、愚直なまでの「濁点」の生き方を自分に引きよせることから出発することにしよう。子どもと本を結びつけるという途方もない課題に取り組んでゆくなかで、「きぼう」の濁点のためにささやかに生きたい、その思いをともにわかちあいたいと考えた。
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舌足らずで解りにくいところもある。例えば、なぜ「物語純度100%」ではいけないのか? とか「物語作りに計算はつきものだろう」という反論もあるだろう。それぞれに丁寧に考えて言語化したいと考えている。

<追伸>昨日、10日以上もブログにエントリがないと夫からつっこみがはいりました。いや、なんだか忙しかったんですよ。まだ、仕事も残っているし…。読書記録すらつけていないのです。トホホ。

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