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『シナの五にんきょうだい』を公共図書館で読み聞かせ!

いろいろと議論のある『シナの五にんきょうだい』(瑞雲社)を、横浜市の公共図書館が「読み聞かせ」に使っていたことを知った(この絵本を読み聞かせに使ったのは、ボランティア団体だと思われる)。

『シナの五にんきょうだい』は、もともと福音館書店から出されていたのものだが、『ちびくろさんぼ』絶版騒動のころと時を同じくして、絶版になっていたものだ。きちんと議論をしないで、「臭いものに蓋」的に絶版にしてしまうことにも問題があるだろうが、ほとぼりが冷めた頃、ゲリラ的に復刊したことも気になっていた。

『シナの五にんきょうだい』は、1995年に瑞雲社から復刊され、多くの読者から歓迎されたらしい。また、2005年には、岩波書店が「サンボ」という差別用語が使われているという理由で絶版処置をとった『ちびくろさんぼ』(ドビアス版)も、瑞雲社より復刊されている。こちらもまた好意的に迎えられたようだ。以下は、『ちびくろさんぼ』復刊に対する、瑞雲社のコメントである。

本書は、わが国では1953年に岩波書店から発売され、1988年に絶版になるまで、日本中のこどもたちに親しまれていた絵本です。その後も復刊を望む声は多くありましたが、岩波書店はもちろん、どの出版社も、それに応えようとはしませんでした。/小社でも検討に検討を重ねた結果、その内容や文章表現に何らの差別は無いと判断し、復刊することにしました。(瑞雲社HPより)

「その内容や文章表現に何らの差別は無いと判断し」た、瑞雲社の見解には疑問を感じるが、この復刊をきっかけに新たに議論がされればいいなと思っていた。しかし、私が調べた範囲では、新たに深い議論がされた形跡はなかった。図書館が所蔵するに当たっては、その「扱い」をどうするのかを、当然、きちんと議論したことを前提として、当該作品を所蔵することには問題ないだろう。また、個人で楽しむことに関しては、議論すべき問題ではない(個人的な思いはあるが、ここではいわないでおく)。

しかし、「読み聞かせ」となると、さらに考慮した上での判断が必要であろう。誰が携わろうと、公共図書館やそれに準ずる場での「お話し会」や「読み聞かせ」で使用する本については、十分に検討したうえで選ぶべきだ。『シナの五にんきょうだい』について言えば、少なくとも、「弁髪」「シナという呼称」について検討すべきだったろうし、「絶版」の経緯についての学習も必要だったと思う。こういったことを、学習すれば、「子どもがよろこぶ」からという視点だけで、「読み聞かせ」に使おうという発想は生まれてこないだろう。あまりにも不見識な「読み聞かせ」にびっくりした。現場の図書館員はいったい何をやっていたのかと不信感を持つ。「お話会」は、ボランティアに丸投げかい! 横浜市は、図書館には司書を採用しているにも関わらず、こんなことでいいのか!

また、同じような内容の『王さまと九にんのきょうだい』を比較してみれば、物語的にどちらがすぐれているのかもよく解るだろう。さらに、『王さまと九にんのきょうだい』には、中国少数民族のイ族の話であると明記されているが、『シナの五にんきょうだい』については、原典が提示されていないのも、誠実さに欠ける(いろいろ調べたのだが、私は、原典を特定することができなかった)。

アマゾンの「カストマー・レビュー」では、「人種差別があるということで絶版にされたらしいが、物語はおもしろい」という意見が大半だったが、一般読書人と異なり、子どもに本を手渡す立場にある人は、さらに深い考察が必要なのは言うまでもないことである。少なくとも、灘本昌久氏の著作は読むべきだったろう。

「子どもが読んでたのしいと思う本をえらぶべきだ」と主張している赤木かん子さんでさえ、ご自身が作るブックリストには、『シナの五にんきょうだい』や『ちびくろさんぼ』は載せていない。赤木かん子さんの言動には、「?」と感じることもあるが、これについては、彼女の見識だと思っている。

図書館員や教員など職業人だけでなく、ボランティアとして、子どもと本を手渡す立場にある方たちにも、謙虚に学んでいただきたいと願うばかりである。

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最終試験お疲れ様でした。
図書館員としての、それぞれの意識・・・大事なことですね。たぶん学生はその問題について、これからの最終課題に向けて、真剣に考えていく必要がありますね。
話は全然変わりますが、昨日娘と映画「レミーのおいしいレストラン」を見てきました。映画そのものは久々に面白かったのですが、その前の予告で9月からの「ミス・ポター」があって、ついこの前先生からのお土産の「ピーターラビット」の本を手にしていた娘と同時に、思わずアッっと声を上げてしまいました。ブログの写真をみたばかりでしたし、まあ、基本的には大人向けの映画ですけど、ちょっと見てみたいと、興味はそそられました。またこれをきっかけにブームとか起きちゃうんでしょうか?
さらに、来春「黄金の羅針盤」も映画化です。私としては「映像化」に関してはちょっと色々ありますが、日本製でないことだけはちょっと安心材料です。
それと「ねずみ女房」を買おうと思ってアマゾンみてたら、あの『ゲド戦記』訳の清水さんが翻訳のものを見つけました。そっちを買ってみようかと思います。“大人の読む絵本”と言うような宣伝文句で・・・。先生はもうお読みになりましたよね?

訳の違い

わしこ先生、はじめまして、こんにちは。
最近、よく読まさせていただいています。
私は、自宅でほそぼそと文庫などやっているものです。「シナの五にんきょうだい」は子ども達に、とっても人気のある絵本です。瑞雲社から再販された時は飛びついて購入しました。でも、読んでみて少しがっかりしました。訳者がかわっていたのです。私は個人的に、石井桃子さんの味わい深い日本語が良かったなあと思いましたが、子ども達に読んであげて初めて、決定的な違いを発見しました。瑞雲社の訳だと一番目のにいさんがなんでろうやに入れられたのかが、分かりづらいのです。必ず、そこで、「え!なんで!」と言うので、前のページにもどって、説明しなくてはならないのです。石井桃子さんの訳でなんで出さなかったのか、
歯噛みする思いです。それはそれで、いろいろと出版社の思惑があったのでしょうが、差別問題など難しい問題があるようですが、子どもは、そんなことは、するっと飛び越えて、物語の面白さを楽しんでいます。

コメントありがとうございます。子どもの本を手渡すことの責任と重みをひしひしと感じています。石井桃子さんが、『シナの五にんきょうだい』復刊についてまったく関わっていないのは、彼女の見識であり、長年子どもの本に携わってきたことへの一つの「回答」であると、私は受けとめています。機会があれば、The Funny Little Womanを目にしていただけたらうれしく思います。

異文化表現というのは、センサーシップと止揚(アウフヘーベン)のくり返しで、じょじょに進化しゆくものだと思っています。アメリカでは、The Seven Chinese Brothersが、「止揚」の産物として生まれていると、理解しています

わしこ先生、ありがとうございます。「The Funny Little Woman」読んでみます。センサーシップと止揚の意味がわからないので、調べましたが、止揚は調べた文がまたわかりませんでした。もっとよく調べてみます。

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