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2007.06/07 [Thu]
『バスラの図書館員』を読む。あれれ?
「葦岸堂之日々是日々」というブログの主宰者である「葦岸堂」さんより、『バスラの図書館員』の翻訳には問題がありそうだということをうかがっていた。気になっていたのだが、図書館にゆく暇もなく、とうとうアマゾンからしぶしぶ取り寄せた。原書は出版後すぐに入手していたし、「出版を前提」に訳も完成させていたので、じつは日本語訳は必要なかったのである。なんと日本語版は、原書より一回りも小さいのである。
この絵本は、イラクのバスラで実際にあったことを作品化したもので、そのネタもとは、2003年7月23日付けで『ニューヨークタイムズ』紙に掲載されたシェイラ・ディーワン氏の記事である。バスラの図書館で働くアリア・ムハマッド・ベイカー(Alia Muhammad Baker)さんが、アメリカのイラク侵攻下において、図書館の蔵書のほぼ70%にあたる3万冊を個人の力で救い出したという話である。
私がこの絵本に出会ったのは、ヴァンクーバー市ディヴィッド・リヴィングストン小学校を訪問した2005年1月のことである。先生(司書教諭)が小学校1年生の子どもたちに「読み聞かせ」ていた授業を見学したのである。日本語版は、多人数にむけてわかちあうというより、個人の読書を想定して作られたように思われる。少なくとも小学校低学年が読めるようには編集されていない。
ここだと思われるところを見つけた。以下、原文、日本語版、わしこ訳の順序で紹介する。
At last, the beast of war moves on./ Alia knows that if the books are to be safe,/ they must be moved again,/ while the city is quiet./ So she hires a truck to bring all thirty thousand books/ to her house and to the houses of friends.
やっと、戦争というけだものは、町をでてゆきました。
町が静かになっても、アリアさんは安心しませんでした。
もし本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、
きっとまた、町にもどってきます。
アリアさんはトラックを借りて、3万冊の本全部を、
じぶんの家と何人かの友だちの家にはこびだしました。(日本語版)
ようやく、戦争という怪獣がこの町からうごきはじめました。
しかし、本をまもるためには、いまのうちに
本をどこかにかくさなければいけないことが
アリアにはわかっていました。
30000冊の本をアリアははこびます
じぶんの家へ、友だちの家へ。(わしこ訳)
日本語版は、明らかに<if the books are to be safe, they must be moved again>を読み違えているようだ。よく読んでみると<もし本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、きっとまた、町にもどってきます>は、意味をなしていない。私は、この本を小学1年生にも理解してもらうことを念頭において訳文を作ったので、今こうして書き写してみると、いかにもぎこちないのが情けない。
また、「アリアさんはのぞみをすてない」という表現が使われているところが数カ所あるが、原文では、<wait>である。「アリアさんは戦争が終わるというのぞみをすてません」は、<She waits for war to end.>である。「まつ」と「のぞみをすてない」の違いは微妙かもしれないが、本質的であるように思う。この絵本における<wait>には、理不尽な戦争に対するある強い意志を感じるのである。
日本語版の帯には、<「この絵本が好き!2007年版」(平凡社)ベスト4位!><厚生労働省社会保障会議推薦><やまねこ翻訳クラブ絵本部門対象受賞>という文字が躍り、2007年4月には、第5刷が出版されている。評判になった絵本だけに、これまで何の対応もなされていないことが残念である。
●Jeanette Winter. The Librarian of Basra :A True Story from Iraq. Harcourt,INC. 2005.
●ジャネット・ウインター絵と文、長田弘訳、『バスラの図書館員:イラクで本当にあった話』。晶文社。2006年。
この絵本は、イラクのバスラで実際にあったことを作品化したもので、そのネタもとは、2003年7月23日付けで『ニューヨークタイムズ』紙に掲載されたシェイラ・ディーワン氏の記事である。バスラの図書館で働くアリア・ムハマッド・ベイカー(Alia Muhammad Baker)さんが、アメリカのイラク侵攻下において、図書館の蔵書のほぼ70%にあたる3万冊を個人の力で救い出したという話である。
私がこの絵本に出会ったのは、ヴァンクーバー市ディヴィッド・リヴィングストン小学校を訪問した2005年1月のことである。先生(司書教諭)が小学校1年生の子どもたちに「読み聞かせ」ていた授業を見学したのである。日本語版は、多人数にむけてわかちあうというより、個人の読書を想定して作られたように思われる。少なくとも小学校低学年が読めるようには編集されていない。
ここだと思われるところを見つけた。以下、原文、日本語版、わしこ訳の順序で紹介する。
At last, the beast of war moves on./ Alia knows that if the books are to be safe,/ they must be moved again,/ while the city is quiet./ So she hires a truck to bring all thirty thousand books/ to her house and to the houses of friends.
やっと、戦争というけだものは、町をでてゆきました。
町が静かになっても、アリアさんは安心しませんでした。
もし本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、
きっとまた、町にもどってきます。
アリアさんはトラックを借りて、3万冊の本全部を、
じぶんの家と何人かの友だちの家にはこびだしました。(日本語版)
ようやく、戦争という怪獣がこの町からうごきはじめました。
しかし、本をまもるためには、いまのうちに
本をどこかにかくさなければいけないことが
アリアにはわかっていました。
30000冊の本をアリアははこびます
じぶんの家へ、友だちの家へ。(わしこ訳)
日本語版は、明らかに<if the books are to be safe, they must be moved again>を読み違えているようだ。よく読んでみると<もし本が無事だとわかったら、戦争というけだものは、きっとまた、町にもどってきます>は、意味をなしていない。私は、この本を小学1年生にも理解してもらうことを念頭において訳文を作ったので、今こうして書き写してみると、いかにもぎこちないのが情けない。
また、「アリアさんはのぞみをすてない」という表現が使われているところが数カ所あるが、原文では、<wait>である。「アリアさんは戦争が終わるというのぞみをすてません」は、<She waits for war to end.>である。「まつ」と「のぞみをすてない」の違いは微妙かもしれないが、本質的であるように思う。この絵本における<wait>には、理不尽な戦争に対するある強い意志を感じるのである。
日本語版の帯には、<「この絵本が好き!2007年版」(平凡社)ベスト4位!><厚生労働省社会保障会議推薦><やまねこ翻訳クラブ絵本部門対象受賞>という文字が躍り、2007年4月には、第5刷が出版されている。評判になった絵本だけに、これまで何の対応もなされていないことが残念である。
●Jeanette Winter. The Librarian of Basra :A True Story from Iraq. Harcourt,INC. 2005.
●ジャネット・ウインター絵と文、長田弘訳、『バスラの図書館員:イラクで本当にあった話』。晶文社。2006年。
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私が翻訳をしたら、わしこ先生のようにはなりません。もちろん、くどくて、すっきりしない訳になります。
文章力、言葉力、考察力、伝達力と全部がありますと、読み手は頭のなかで映像を作れます。
驚きました。だから、皆さんに尊敬され慕われているのですね。
11日が本当に楽しみであり、緊張してます。