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久しぶりの再会(完結編)

「読みあい」ということについて考えている。リエさんの「読みあい」は、いわゆる図書館や学校などで行われる「読み聞かせ」とどこか本質的に違うような気がするからだ。そんなことを考えるきっかけになったのは、二日目の講演会でのことだった。

一日目を「総論」とすると、二日目の講演は「各論」という趣があった。それは、「具体的に読み聞かせにふさわしい本について知りたい」という聴衆からの要望があったからだと聞いた。しかし、講演を聴いたあとで、「XX の本を読み聞かせに使いたいのだが」とあげられた絵本は、絵本に対するその人の姿勢をすら質したくなるようなものもあった。なぜそのようなことになるのだろう。一つ考えられるのは、「読み聞かせ」が目的化してしまっていることだ。読み聞かせの場で「絵本を読むこと」だけが「読み聞かせ」であるとほとんどの人が考えているのがわかる。それも真実の一面だ。しかし、リエさんの実践を拝見すると、微妙に違うのがわかる。

講演ではある「読みあい」の実践を記録したビデオを見せていただいた。そこで彼女は、小学校高学年の女の子と『きゅうりさんあぶないよ』という絵本を読みあっていた。この本は、福音館書店から出版された「こどものとも年少版」である。まず、「読み聞かせ」をする人だったら、小学校高学年の子どもに、「年少版」の絵本は選ばないだろう。では、なぜリエさんが、この絵本を選んだのか。リエさんだって、もちろん子どもたちと「絵本を楽しむ」ことは前提であろうが、しかし、それよりも何よりも、彼女の「読みあい」には、「絵本」を仲立ちとしたコミュニケーションを重視しているからだろう。

この『きゅうりさん・・・』は、「きゅうりさん そっちへいったらあぶないよ ねずみがでるから」というフレーズが繰りかえされて、物語が展開される構造をもっている。その繰りかえしのなかで、きゅうりさんは、次第に武装してゆくのである。繰りかえされるフレーズがなんだか呪文のようにも聞こえる不思議な絵本で、物語構造がシンプルであるぶん「わけのわからない」絵本でもある。

リエさんとその少女は、「きゅうりさんそっちへいったらあぶないよ ねずみがでるから」というフレーズを交代に届けあっていた。最初、少女の声は「とんがっていて」、「届ける」というより「とばす」感じだった。そして、その少女の声に呼応するように、リエさんの声もとんがっていたのだが、次第に、少女の声が変わっていったのである。最後は二人で言葉のリズムそのものを楽しむ「読みあい」で終わった。

ビデオを見ていた私たちは「何かがかわった」ということは理解できた。しかし、その正体は、いまだに私にはしかとしていない。たぶんこれが「読みあい」(読みあいだからといって必ずしも聴き手が「読むこと」を要請させるわけではない)なのだという思いはある。

『きゅうりさん・・・』の読みあいは、ほんとに短いセッションのようだった。そして、少女はたぶんそのとき「ひらかれた」と思う。

ほとんどの「読み聞かせ」は、絵本の物語を聴き手に届けることが重視されているのではないだろうか。だから、「読み手」は、読み方に関するテクニックの向上を目指す。物語や絵本の「声」を訊かないままに。物語や絵本の声を訊くとは、「読みこむ」ことや「解釈」とはまた違う気がする。読みこんだ先に見えてくるのが、物語や絵本の声かもしれない。ほとんどの絵本は、開かれて、読み手と聴き手がそこにともにあるとき、物語を「拓いて」ゆくのだろう。

久しぶりの再会から、すでに一週間が経ってしまい、日常に戻ってしまったが、「読みあい」についてずっと考えていた一週間でもあった。その間、学生に絵本を読んだりもしたが、「あー、これは読みあいとはちがうなぁ」と感じたこともあった。授業のなかで学生と「読みあい」ができる時は、どんなふうに生まれるのだろう。
 

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絵本がまんなかにあると、あなたとわたしのあいだに、「触れる」通路ができるきがする。通路はね、錆びていても会いに行くときはなんかスリリングだし、その通路の表情が「今あいにゆきます」って気持ちを支えたり、いやいや、今日はひとまず、ここからあの人をながめてひきかえすとしよう。それでもいいさ、私がいること、あなたがいることは、この通路でつながっている、って感じかなぁ。
昨日、今日と親子の読みあいをつくる場があったんだけど、親子の組み合わせがばらばらにほどかれ、知らないおばちゃんと、あたし。知らないおにいちゃんとあたし、というような読みあいカップルができて、自然にこころが寄り添っていく。ものがたりが、その様子を笑ってみている感じですっごくいい時間でしたぁ。

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